釣り師の日常 かつての上司と街でばったり出会う 

 都市の釣り師はウィークデーに入ればまた日常の都市生活に戻る。とはいっても私は入社してまだ1ヶ月で日常として慣れていない。見えないストレスを抱えていたのだろう、唇にはしこりができて痛かった。だが先週までの断続的な旅行と釣行のお陰か置かれた環境に少しずつ慣れてきたようでしこりはほぼ消えている.

 一万数千円も支払った資格試験もさし迫っているのに休みの日は旅行やら釣りばかりしている.全国キャンペーンは今しかないからと2つも旅行を組み込まれたらどうしようもない.とはいえ私としても本業の引継ぎまで始まってしまい仕事の大半を短期に片付けねばならず頭がとっちらかっている。加えてどちらかといえばサブ的な資格という資格の位置付けと、試験で問われる勉強内容そのものが非常につまらないことがこのやる気のなさに直結している.仮に来年も受けるとなるとどうやって興味関心を維持できるか試験の難易度よりもそちらの方が心配である.

 思えば以前の職場はかれこれ20年近くも在籍していたからそのペースに身体が慣れきっておりサボりも含めた日常があった。やろうと思えばいくらでもサボることはできた。だがサボればサボるほど虚しさも増えていった.やることがないからやることを見つけて取り組むのだが、それに対して事前に承諾を得ていたにもかかわらず、外野の現場の社員が反対意見を述べた途端、これまでの決定のプロセスは無視されて当方の意見も聞かれることはなく、その反対者の意見がそのまま通るのである.

 その外野の取りまとめがドリーマー取締役であり当方の元直属上司である自称・執行役員にやめろと下知してそれで終わりである.全くもって民主的ではないこの謎めいたやり口には散々頭を悩まさせられた.

 ドリーマーは矛盾を付かれたと感じると、そんな話は聞いてないなどと喚いて自分の意見を通すわがままな人物である.筋が通った説明をされるとドリーマーはわかっているから当方が発言できる会議の場はなく、密室で上役には何もいえない自称執行役員に下知するだけである.こんな時にパワハラ社長は適切な対応を行わない。うまくやってくれだけである。

 簡単にいえば俺のものは俺のもの、お前のものも俺のものというジャイアン気質そのもので陰湿さに躊躇のない東北人である.その無茶な意見を易々諾々と飲んできたのが元直属の上司である自称・執行役員であった.

 自称執行役員はパワハラ社長の無理難題も含めて言うことを全て聞くのでクビにはならなかったが、仕事能力および人間性に問題を抱えていた。頭は一般的には良い方の部類ではあったが狭量で小役人のような印象だった.彼は肩書きに拘るあまり会社に執行役員制度など何もないにも拘らず名刺に執行役員などと無理矢理印刷し会社のメールの署名にこの肩書きを入れてしまう。

 私は一度は別れた人物と街でばったり出くわすことが多い。釣りから帰った次の日、その自称執行役員に遭遇した。数ヶ月ぶりに目にした彼の印象としては、少し酒を控えたのかスタイルは少しほっそりみえたものの、少々浮かない暗い顔をしていた。この辺で働いてるの?ときかれ手短にそうだと答えると表情を少し険しくし、じゃ、と一言だけ述べ去っていった.

この場所は日本を代表する大企業が林立する街である.当方の新しい所属先は国を背負って立つまでではないが社員数数千人規模のそれなりの大企業である.小さく弱いものに対しては横柄な態度で、大きく強いものには媚びへつらうような人物には多少の無言が効いたのかもしれない。仕事ができるわけではなく文章も資料も下手くそでよく企画を続けておられるなあと頭が下がる思いが改めてした.

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